俺たちは夜に舞う蝶らしい
澪のその言葉は重くのしかかる。
蘭音のことを“蘭ちゃん”と呼ばなかったのは、馬鹿みたいに笑っていた時間と蘭音がKINGに潜入した後との区別をするためだ。
「[あなたは確かに僕たちを裏切った。
それは紛れもない事実です。]」
『何が言いたい?』
「[……秋雨さん。
あなたが本当に僕たちの敵なら、あなたは悲しくて可哀想な人。]」
『…………は?』
静かな声。
そして、インカムの向こうから聞こえる声に呻き声が入りだす。
呻き声は俺のいる場所に、インカムなしでも聞こえる。
ということは澪と翼はすぐそこに来ている。
「[僕たちといたあなたは、心から楽しそうだった。
僕たちが馬鹿をした時、助けてくれたのは凛音さんであり要さんであり秋雨さんです。
蘭音さんを潜入させるときも手伝ってくれたのは……秋雨さんでした。
…………だから、僕は……僕達は信じたくなかった。]」
『……騙されてたわけだ。
悲しいのも、可哀想なのもお前達だろ。』
「[違うよ。]」
「 違うよ。 」
インカムと側でする声と同じタイミング、同じトーンで聞こえた。
振り向くとビショビショになった澪と翼。
二人とも血と雨とで濡れていて澪の手には弾が無くなったのか短刀が握られている。
「僕たちはあなたにこの世界に入れられた。
だけど、あの時そのままKINGに入れることだって出来たはず。
あの時点ではリストに入っていたのでしょう?」