24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「友達でも、取引先の人でもないのに、勝手にあんなふうに紹介してしまって……」
「俺は、恋人って言ってくれても構わなかったけど」
「失恋翌日に、恋人がいるわけないじゃないですか」
「でも、ホテルにも行ったし添い寝もしたし、キスだって」
「キス!?」
立花の胸元から顔を上げ、勢いでまた甘えてしまっていたことに気づいた伊鈴は少し距離を取る。
そして、この距離で感じた白檀の香りになんとなく覚えがあった。
――〝今夜は、俺が守るから。だから、いい夢を見て〟
眠りに落ちる前に聞こえたような、優しい言葉が脳裏で弾けるように不意に思い出される。
(まさか、私、立花さんと……キスしちゃったの!?)
驚きですっかり涙が引っ込んだ伊鈴を見て、立花は安堵の笑みを浮かべる。
「昨日はおでこ、さっきは頬。次は、どこにしようか?」
「し、しなくていいです!」
伊鈴はホッとしながらも、彼にいたずらに心を揺らされて憤りも収まっていた。