24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

 軽食を済ませてから、ふたりは駐車場に向かい、六本木の街を出た。
 どこで拓也たちと遭遇するともしれないからだ。

 立花は運転席でハンドルを握り、再び銀座に向かう。
 伊鈴の横顔を見遣れば、いつの間にかスッキリとしていて、心が前を向き始めているようだった。


「まだ雨降ってますね……」
「そうだね」

(それは、どっちなの? もう帰りたい? まだ止まないでほしいと思ってくれたりしてる?)

 立花は、伊鈴の小さな呟きにも彼女の気持ちを探す。


「立花さん」
「なに?」
「私、泣くのはもう終わりにします」

 出会ったばかりなのは分かっている。
 でも、惹かれてしまったのだから抗えない。
 悲しい涙と切ない顔ばかり見てきたけれど、これからは、今日からは……。

 立花は、この時間が終わってしまう予感に気が逸った。

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