24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「夜は、フレンチを食べに行こう」
「本当ですか!? でも、なにからなにまで、そんなに叶えてもらわなくても」
「ちょっと無理そうなワガママも、できるだけ叶えるのが今日の俺の役目だよ」
昨日、店で泣き崩れたちょっと迷惑な〝ただの客〟だったはずなのに、どうしてここまでよくしてくれるんだろう。
プレゼントをもらうような立場でもないし、雨が降って別れたら、もうこうして過ごすこともないかもしれないのに……。
(立花さんは、なにを想って、こんな時間をくれるの?)
過去の恋人と過ごした時間にはない、穏やかで優しいひとときが積み重なる。
失恋した自分の背中を押してくれる友人のようでもあり、終わりの見えない涙の防波堤にもなってくれた。
夜の冷たい雨に打たれないよう守ってくれて、最低の思い出に染まった誕生日を、こうして上塗りしてくれる。
いつの間にか、冷え切っていた心が随分と温かくなったように感じた。