24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

 21時。
 銀座でフレンチを堪能し、店を出ると、まだ雨が降っていた。

(雨、止まないなぁ……)

 立花が差してくれるネイビーの傘の中、出会ってから24時間以上経ったのだと気づいた。

 昨日のこの時間は、鮨店で舌鼓を打っていた頃だ。
 あの時は、こんな時間が待っているとは思いもせず、立花の優しさにありがたく甘えさせてもらって終電で帰るつもりだった。

(もうちょっとだけ、立花さんと話せるかなぁ)

 細雨に濡れないよう、近くのパーキングまで立花が伊鈴の肩を引き寄せた。

「もう帰りたい?」
「……帰りたいって言ったら、帰すんですか?」
「帰さないけど」

 まるで伊鈴の心をノックするような問いかけに、素直に「帰りたくない」と言えなかった自分が少し歯がゆい。

< 105 / 146 >

この作品をシェア

pagetop