24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「言わない優しさもあるけど、十河さんはこれ以上傷つく必要はないんだからね?」
「ありがとうございます」
「俺とのことを聞かれたら、恋人だって言ってくれてもいいし」
「……はい」
立花の冗談は、最後まで優しい。
そして、伊鈴も素直に受け取った。
帰り道は早く時間が過ぎるもので、あっという間に茗荷谷の街に入った。
自宅まで送ると言う立花に甘え、駅前から再びナビをする。
「このあたりで大丈夫です」
1日ぶりの自宅マンションは、ところどころ明かりが灯っている。
見慣れた景色が、伊鈴を現実に戻していくようだ。
(もう、帰らなくちゃ……)
雨が止むまでという約束を守る立花の誠実さが、ありがたくも焦れったい。
いつの間にか、彼と一緒にいることが心地良く、他愛ないことで笑ったり、泣いたら抱き寄せてくれる温かさが恋しくなってしまったようだ。