24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

「もう、会えないかな?」

 素直に〝帰したくない〟と告げられたらいいのに、未熟な関係が勢いを奪う。
 昨夜は言えたその言葉は、想いが募れば募るほど胸の奥で燻るようになった。

(また、冗談だって言うのかな……。それとも、本当にそう思ってくれてるの?)

 伊鈴は、彼の言葉に本音を探す。
 落ち込んでいたら、冗談を言って場を和ませ、泣けば胸を貸してくれた立花の、自分への想いが見えないからだ。

 そして、なによりも、まだ次の恋を始める勇気が足りていない。


「……ごめん、こんな時に言われても困らせるだけだったね」

 立花は、ふっと微笑みを浮かべ、さりげなく伊鈴の手を取った。


「本当に、楽しかったよ」
「こちらこそ、いろいろとありがとうございました」

 何度交わしたか分からない会話も、きっとこれで最後。

(帰りたくないって、思うのは……彼のことが好きになったからなの?)

 伊鈴が自分の心と向き合い始めたと同時に、彼は彼女の手を引き寄せる。


「俺と過ごした時間を、もう少しだけ覚えていて」

 立花は、伊鈴の左の手の甲に、想いをこめてキスをした。

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