24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

 ――走り去ったセダンを見届ける間、心の奥から湧いてきた想いが本心だったんだろうな。

 月曜になり、伊鈴はいつもと変わらぬ朝を迎えた。
 ひとり暮らしの部屋に置いていた、拓也との思い出の品は昨日のうちにすべて処分し、立花にプレゼントされた服とヒールが丁寧に飾ってある。

 帰らないで、とあの時告げていたら、テールランプを切なく見送ることはなかったのかもしれない。
 今朝も、違う世界が広がっているように感じたことだろう。


 土曜の夜までの24時間が、忘れられない。

 今になって、彼を想う気持ちに気づくなんて、遅すぎる。
 次の恋は始められないと決めつけ、告げられなかった素直な想いも、今なら言えるのに……。

< 111 / 146 >

この作品をシェア

pagetop