24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
出社したら、誰も失恋したことなんて知らなかった。極秘で交際していたのだから当然だけど、2年も上手くバレずにやっていた過去の自分を褒めてあげたいと思う。
「伊鈴、お疲れ」
「あっ……うん、お疲れ様」
由紀が営業部にやってきて、昼時になったのだと気づいた。
総務で働いている彼女は、まだなにも聞かされていない様子だ。
きっと拓也も、なかったことにするつもりなのだろう。
彼に、後悔してほしいとも思わない。
だけど、彼より何倍も幸せになってやろうとは思う。
「ねぇ、この前一緒にいた立花さん、だっけ? あの人すーっごくイケメンだったね! 伊鈴の彼氏じゃないの?」
近くのデリで買ってきた野菜中心のお弁当を、社内の休憩室で広げる。
由紀は、向かい側に座って、幸せそうにスマートフォンを操作しながら問いかけてきた。
「彼じゃないよ。私が片想いしてるだけ」
だけど、その想いはあまりにも淡い。
幸せになると決めたのに、泡のように消えたあの時間を追いかける時間が続く。