24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
でも、由紀にはハッキリ言っておこうと決めていた。もう取られたくないからだ。
彼女が拓也を横取りした証拠はないけれど、真実を突きとめるのも勇気がいる。
拓也のせいで、友人をひとり失うのも違うだろうし、必要以上に彼女を疑うのも望まない。
失った恋で、悲しみに暮れるのはもうやめた。
その代わり、立花さんのことだけは、たった一夜にして誰にも譲れない大切な存在に変わっていた。
金曜は、営業部内で飲みに出る同僚もいて、定時を過ぎると活気が満ちる。
各々抱えている案件を滞りなく済ませ、予定を合わせて街に繰り出すスーツ姿を数人見送った。
「十河さんも飲みに行かない? いつも頑張ってるから、部長がおごってくれるって」
「すみません。先約があるので、次の機会に」
「了解。じゃあ、お先でーす」
2年上の先輩男子が、嬉々として仲間とフロアを出ていった。
伊鈴も間を置いて、デスクを立つ。
約束などなにもないけれど、今日はどうしても外せない予定があるのだ。