24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
店の引き戸を閉め、立花は向かいの駐車場に停めていた車の助手席へ導く。
「十河さん、今夜の予定は?」
「……おはぎとカステラを食べるくらいです」
立花に会えなかったら、和菓子だけでも買っていくつもりだった。彼を想いながら、新しい恋の予感に心を躍らせ、幸せで上品な甘さを楽しもうと思っていた。
欲張って二つずつ買ったけれど、偶然の再会は嬉しい誤算になった。
「十河さんさえよければ、ご一緒しましょうか?」
「はい」
あの夜と似た誘い文句をかけられ、胸の奥がギュッと狭くなる。
「少し待ってて。閉店作業を確認してくるから」
瞳を潤ませる伊鈴の髪を撫で、立花は店に戻っていった。
彼を待つ間、車内にほんのりと漂う白檀の香りに目を閉じる。
1週間会えなかっただけなのに、泣きたくなるほど切ない恋は初めてだ。
そして、彼のことをほとんど知らないのに、こんなにも惹かれている想いは、きっと本物だと実感した。