24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「お待たせ」
運転席でシートベルトを締め、車を出した彼をじっと見つめてしまう。
「急に来てすみません。お仕事、大丈夫ですか?」
「特に問題ないよ」
立花を想う時間が長すぎたからか、久しぶりに会ったような感覚が抜けない。
だけど、立花はまるで友達と話すように接してくる。
フランクで、伊鈴と過ごすのが日常であるかのようだ。
(こんなに切なかったのは、私だけなんだろうな……)
伊鈴は焦がれる想いを秘めながら、黙って銀座の街に視線を流した。
「今日はどこに行こうか」
「ワガママ言ってもいいですか?」
「どうぞ」
微笑みを向けると、真っ赤な顔で瞳を潤ませた伊鈴と目があった。
(……そんな顔されたら、今すぐ抱きたくなるけど、そうはいかないよな)
自分に会いに来たと言った伊鈴が、どういうつもりなのかわからないのだ。
先週のお礼かもしれないし、和菓子を買いに来たついでかもしれない。
たった1日、雨が止むまでの24時間を過ごしただけの自分に、彼女が本気になるとは思えないのだ。