24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

(いきなり家に行きたいなんて言ったから、引いちゃったかな……)

 伊鈴は助手席から、時折立花の横顔を見つめる。
 仕事終わりに突然会いに来た上に、家に行きたいとかずっと考えてたなんて言われても、反応に困るだろうとは思っていた。

 でも、引かれたくはないのだ。


「私、立花さんと誕生日を過ごせてよかったです。おかげで、ちゃんと前を向けるようになりました」
「あれから、元彼には会った?」
「はい。会社で……。彼は、うちの大得意なので、結構頻繁に来社するんです」
「……なにも言われなかった?」
「大丈夫でした。付き合う前の、客先同士の関係に戻ったんだなぁって感じてます」

(やっぱり、優しいな。気にかけてくれてたんだ)

 素っ気ないと思ったのは一瞬で、口を開けば端々に立花の優しさが散りばめられた言葉に、伊鈴はますます想いを強くした。

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