24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
【番外編】雪花

 今日は朝から凍てつくように寒い。
 12月中旬、都心にもしんしんと雪が降り、白い化粧をした街は幻想的でもある。

 立花は、鉄紺色の正絹の着物に、丹後ちりめん袷の濃紺の羽織を着て、今日も開店から店頭に立っている。


「入口にビニール傘の用意をしてください。それから、お待ちいただく際にはお茶をお出しできるように準備を」

 足元の悪い日には必ず傘を渡し、商品の用意ができるまでの間、お茶で暖を取ってもらう。
 それらは、ずっと引き継がれてきたおもてなしのひとつだ。

 歳暮や挨拶回りの時期ということもあって、今日も看板商品のおはぎと極上カステラは、予約分を含め売り切れが予想されている。
 さらに、冬季限定の苺大福がショーケースの中心に並んでいるが、当日手作りの個数限定品は午後までになくなりそうだ。
 立花の苺大福は、最高級のさがほのかを使っており、白あんとこしあんの2種を紅白の求肥で丁寧に包んでいる一品だ。

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