24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

「こんにちは。いつもお世話になっております」

 スーツにウールコートを着た男がふたり、昼前に立花の店を訪れた。彼らは航空会社のグループ企業で、食品商社〝エアロフーズ〟の社員だ。

 アポイントをもらっていた立花も、彼らの到着を待っていた。


「こちらこそ、いつも大変お世話になっております。お足元の悪い中お越しくださってありがとうございます」

 ゆっくりとした口調で丁寧に話す立花は、利用客がいなくなったイートインスペースへ案内し、店員に焙じ茶をお出しするようにと告げた。

 エアロフーズとは、〝雪花(せっか)〟という商品の販売店契約を結んでおり、先代から続く長いつきあいがある。

 雪花は、北海道産の最高級小豆で作ったこしあんに、雪のように滑らかでやわらかい餅を絡めて食べる、いわゆる〝あんころもち〟のようなもの。しかし、他店のそれとは一線を画しており評判がいい。

 通常、銀座の立花本店でのみの取り扱いだったが、国内空港の土産店で、数量および晩秋から早春の季節限定で土産物として置いている。
 その話を持ち込んだのが、エアロフーズなのだ。

< 130 / 146 >

この作品をシェア

pagetop