24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「本日は、担当者の引継ぎの挨拶で参りました。私事ですが、別の事業部へ異動となるため、今後はこちらの飯島拓也が、担当させていただきます」
(……まさか、冗談だろ?)
立花は、後任として共にやってきた拓也を前に、悪い冗談でも仕掛けられているのかと思った。
しかし、拓也は前任者がいるからなのか、特段気にする様子もない。
「はじめまして。立花さんのご評判は、かねがねお聞きしております」
傷つけた以前の恋人が、誕生日の翌日に一緒に過ごしていた相手と知りながら、動じることなく深々と一礼してきたのだ。
「ご丁寧にありがとうございます」
拓也が渡してきた名刺を受け取り、立花もまた名刺を返した。
「この焙じ茶も、とても香ばしくて美味しいですね」
「実は、職人が炭火手炒りした静岡の最高級茶葉を使っています。この焙じ茶をつかった新商品も考案中でして」
(大して茶の知識もないだろうに、違いが分かるような顔をするなんて、さすが大手の営業マン様)
立花は穏やかに接しつつも、内心では悪態をつく。