24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「では、その新商品も是非、完成の際はご連絡いただきたいです」
拓也が新しい商談に繋げようと身を乗り出し、焙じ茶をもうひと口飲んだ。
「本当に美味しいお茶ですね……。立花さんの手にかかれば、どんなお菓子も上品なものになるでしょうけれど、今から楽しみですよ」
(黙れ、この粗悪品)
張りぼての微笑みを向けられた立花は、穏やかな微笑みを消し、空気を止めた。
「唐突に申し訳ありませんが、御社との契約を終了させていただきたいのです」
「えっ、あの……立花さん?」
前任者が顔を真っ青にして動揺する隣で、一瞬だけ目を丸くした拓也はやっと口を噤んだ。
「ご冗談ですよね? 先代から長らくお付き合いいただいていますし」
なにも言わない拓也と、この寒い日に額に汗を浮かべる前任者を交互に見つめ、立花は唇で弧を描いた。
「いいえ、こんな冗談は申し上げません。今年度で御社との取引の一切を終了したいと思っています」
改めて姿勢を正し、まっすぐに淀みなく彼らに視線を返す。