24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「立花さん、それだけはどうかお考え直しいただけませんか? 弊社になにか不手際でもありましたでしょうか?」
「ええ、とても受け入れがたいことがありましたもので」
「どのようなご迷惑をおかけしたのでしょうか。詳しくお聞かせいただけますか?」
前任者が必死で食い下がり、謙虚に頭を下げて話していると言うのに、拓也は立花を凝視するだけだ。
「すみません。馴染みのお客様にご挨拶がありますので、本日はこのあたりで失礼いたします」
前任者には申し訳ないが、拓也の態度に我慢できなくなりそうだった。
立花は、彼らよりも先に席を立ち、出直してくるようにと促した。
雪花の取り扱いがなくなれば、いくらか売り上げは減る。
取り立てて急務というわけではないが、先代から続いた取引をここで切るということは、それを補てんできる別の取引がなくてはならない。
しかし、特別そういった話があるわけではなく、立花は勇み足だったかもしれないと薄ら後悔しつつも、遅かれ早かれ同じことだと思った。