24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

 どこかの店でお酒を飲み、気が緩んで泣いたりしたら、また見知らぬ誰かに気を使わせてしまう可能性もある。おはぎを食べただけであんなに号泣してしまったのだから。
 だったら、自宅で飲めばいいのかもしれないけれど、部屋のあちこちに拓也との思い出がありすぎて、底なしの悲しみに頭の先まで沈んでしまうのが怖い。


「とりあえず、歩きましょうか」
「はい」

(普通に考えたら、立花さんの誘いに乗るのはありえないことだ。彼が友人だったら分からないでもないけれど、初対面なんだもの)

 失恋をしたら、女友達と過ごすと思っていた。そして、別れた男をせいせいするまで罵って、すっきりした気分で〝ブランニューな自分〟を翌日から謳歌するのだと想像していた。

 でも、実際はそうじゃなかった。誕生日に同情されたくもなければ、罵る気分にもならなかった。
 それに、女友達に由紀を悪く言われるのだけは嫌だった。

 そもそも、今回は自分が蒔いた種でもあるのだから。

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