24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
半端な慰めはいらない。でも、ひとりにはなりたくない。だけど、誰かに甘えたい。
結果的に、ワガママの三重奏のような気分を味わうなんて。
(誰かといたいって、誰だったらいいんだろう)
銀座駅の構内へと続く、メトロの階段の前に着いた。
駅に着く間に決めるつもりだったのに、どっちつかずで伊鈴の意志は固まっていない。
「立花さんは、このまま飲みに出られるんですよね?」
(気を使って誘ってくれただけだろうし。ここで帰るのが大人だよね……)
「ええ、気に入りのバーがあるので、軽く飲みに行こうと思います。十河さんはどうされますか? もし、電車でお帰りになるのが面倒なら、お車を手配しましょうか」
「大丈夫です。どうぞ、これ以上お気遣いなく……」
番傘を片手に、姿勢よく佇む立花は人目を引く。
それなのに、一緒にいてまた泣いたら、彼までいらぬ注目を浴びてしまうはずだ。
だから、今日はひとりで過ごすべきなんだと、伊鈴は今度こそ覚悟を決めた。