24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

「そうですか。では、またいつか。お気を付けて、お帰りください」
「ご馳走様でした。本当にありがとうございました」

 メトロの階段横で、お礼を告げる。
 そして、きっともうこんな時間はないのだろうと、彼の〝またいつか〟の五文字に感じ取った。

(本当に大丈夫か? またどこかで泣き崩れたりしないといいけれど……)

 立花は丁寧に頭を下げる伊鈴を見つめながら、結局聞きだせなかった涙の理由(わけ)を気にかけたままだ。


「無事帰られたか心配なので、あとでここに電話をいれていただけますか?」
「……はい、わかりました」

(立花さんって、本当に優しい人。こんなふうに大切に扱われたのはいつぶりだろう)

 伊鈴は渡された名刺を大切に受け取った。
 そして、もう一度お礼を言ってから、メトロの階段を一段ずつ下っていく。

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