24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「はじめまして。立花と申します」
「伊鈴、こんなに素敵な人、本当に友達なの?」
おそらく、自分と拓也の過去を聞かされていないのだろう。だから、由紀もこんなことを聞くのだ。
伊鈴はあらゆる答えを頭に並べ、最良の選択を探す。
「本当、おふたりお似合いですよ」
すると、間に入った拓也があり得ないことを口にしたので、伊鈴の悲憤の涙を生み出そうとする。
(なにがお似合いよ。昨日まで私を隣に置いてたくせに! どうしてそんなことが言えるわけ!?)
だけど、伊鈴はグッとこらえて、できるだけ明るく振る舞おうと努めた。
「立花さんのおかげでいい誕生日になりそうです。……由紀も、素敵な1日を」
バッグを持つ伊鈴の華奢な手が、力いっぱい握られている。
(もしかして、この男が元彼? 隣が、友達の女か?)
察した立花は、さりげなく割って入った。
「すみません、せっかくの時間にお邪魔してしまって申し訳ないので、僕たちはこの辺で失礼します」
立花は、力強く伊鈴の手を引いて眼鏡店を出た。