天満つる明けの明星を君に【完】
宿屋の予約はひと月先まで埋まってしまった。
そして初日を迎えた天満と雛菊は、宿屋で働く者全員に紺色のお揃いの前掛けを渡して緊張でかちこちになっていた。
「外見て来たけど、予約のお客さんが並んでるっていうのはなんか変な感じだね」
「え、並んでるの!?まさか主さまも…」
「いや、朔兄たちは昼頃着くって言ってたから、それまでには店内も落ち着く…と思うけど…」
――開店時間を迎え、皆で朝礼を終えて円陣を組んだ。
この宿屋は以前とは全く違う――そう思ってもらえるように皆で案を出し合い、皆で作った宿屋だ。
「さあ、お招き致しましょう!」
戸を開けると、皆で一斉に頭を下げた。
一斉に予約客たちがなだれ込んできて、我先にと宿帳に名を書こうとしたため、番頭が慌てて整列させて汗をかきまくっていた。
「て、天満さん…想像以上…」
「うん…でもこれ…ひと月続くんだよね?」
「う、うん」
――中でもやはりひときわ目立つ天満に皆の熱い視線が集中すると、雛菊はむっとしてしまい、天満は愛想笑いを浮かべて見世物になる覚悟をした。
自分の存在が少しでもこの宿屋の糧になるならば――覚悟はしていたため、ひきつった笑みではなくちゃんと自然に笑えていた。
「さあ雛ちゃん、働こう!僕は番頭とお客様に挨拶をするから」
「はいっ」
今日一番の上客は朔だ。
最上階の一番広い客間を用意してあり、それなりの人数に耐えうる広さを確保している。
この宿屋を褒めて欲しい――その一心で、今までなりふり構わず働いてきた結果を出すために。
「朔兄、喜んでくれるかなあ」
その兄はその後、天満の想像を超える喜びようを見せて、有頂天にさせることになる。
そして初日を迎えた天満と雛菊は、宿屋で働く者全員に紺色のお揃いの前掛けを渡して緊張でかちこちになっていた。
「外見て来たけど、予約のお客さんが並んでるっていうのはなんか変な感じだね」
「え、並んでるの!?まさか主さまも…」
「いや、朔兄たちは昼頃着くって言ってたから、それまでには店内も落ち着く…と思うけど…」
――開店時間を迎え、皆で朝礼を終えて円陣を組んだ。
この宿屋は以前とは全く違う――そう思ってもらえるように皆で案を出し合い、皆で作った宿屋だ。
「さあ、お招き致しましょう!」
戸を開けると、皆で一斉に頭を下げた。
一斉に予約客たちがなだれ込んできて、我先にと宿帳に名を書こうとしたため、番頭が慌てて整列させて汗をかきまくっていた。
「て、天満さん…想像以上…」
「うん…でもこれ…ひと月続くんだよね?」
「う、うん」
――中でもやはりひときわ目立つ天満に皆の熱い視線が集中すると、雛菊はむっとしてしまい、天満は愛想笑いを浮かべて見世物になる覚悟をした。
自分の存在が少しでもこの宿屋の糧になるならば――覚悟はしていたため、ひきつった笑みではなくちゃんと自然に笑えていた。
「さあ雛ちゃん、働こう!僕は番頭とお客様に挨拶をするから」
「はいっ」
今日一番の上客は朔だ。
最上階の一番広い客間を用意してあり、それなりの人数に耐えうる広さを確保している。
この宿屋を褒めて欲しい――その一心で、今までなりふり構わず働いてきた結果を出すために。
「朔兄、喜んでくれるかなあ」
その兄はその後、天満の想像を超える喜びようを見せて、有頂天にさせることになる。