天満つる明けの明星を君に【完】
天満の部屋に戻った雛菊は、天満と共に床に入って腕枕をしてもらいながら、星彩の印象を語った。


「先代様にそっくりでびっくりしちゃった」


「うちの兄弟の中じゃ一番似てるね。凛々しく見えるけど中身はぼんやりしてるから、もう僕ら兄たちのお節介根性爆発しちゃって甘やかしちゃったから、独り暮らしは結構堪えてるんじゃないかな」


ちゃんと晴明の薬を飲んだため悪阻もそんなに感じず顔色の良い雛菊の頬を指でつっと撫でた天満は雛菊をぎゅっと抱きしめて顔を覗き込んだ。


「明日は祝言だよ。緊張したらまた星彩に手を握ってもらえばいいから」


「それ不思議な力だよね。息吹様方の血縁の力って言ってたけどどういう意味?」


「母様は人であって人ではないんだ。星彩はその力を受け継いでるんだと思う。あと…母様が人の寿命で死んでしまっていたら…僕たち兄弟は産まれてこなかったかもしれない。そして父様も生きていなかったかもしれない」


「え…?」


「きっと自ら命を絶っていたと思う。来世に再びまた出会えることを願ってきっと…」


――それはとても素敵なことだと思った。

今生で幸せになれなければ、いつか来世で…


「私もそうしたいな。天満さんが先に逝ってしまったり、私が先に逝ってしまったり…寿命じゃなくて死ぬ時が来たら、私も来世に願いを賭けたい」


「…そういう話はよそうよ。僕ら明日夫婦になるんだよ?これからどれだけ幸せになれるか…それを一緒に考えないとね」


「ふふ、そうだね。天満さん、この子…男の子と女の子、どっちがいい?」


そっと腹を撫でた天満は、目を閉じて雛菊とこつんと額を合わせて微笑んだ。


「どっちでも。でも僕に似ちゃったら気弱になるかもしれないから雛ちゃん似でお願いします」


「はい、頑張ります」


静かな夜だった。

雛菊を抱きしめていると、その温もりですぐに睡魔に襲われて、ふたりで朝までぐっすり眠った。
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