天満つる明けの明星を君に【完】
雛菊は定期的に夢を見ていた。
夢の中で会う度に我が子は少しずつ大きくなり、今では三つくらいの歳になっていて、膝に座るのが好きな子で飽きもせずずっと話しかけていた。
「女の子は父親似になるって言うから、あなたも年頃になったら天満さんに似てくるのかな?」
「あぅ」
本当は天満に話したいのだが、産まれてくるまでは黙っていようと決めていたため、夢の中でいつまでもふたりでごろごろするのが日課になっていた。
「少しずつそうやって大きくなって、産まれてくるまでの間に素敵な女の子の姿で会いに来てくれるんだよね?」
にこにこしているその顔が本当に可愛くて、むぎゅっと抱きしめると――目が覚める時の予兆なのか、我が子の身体がさらさらと金色の光に包まれていき、雛菊は名残惜しそうに膝の上の光を見つめた。
「また会いに来てね。あなたのお父様のこと、もっと沢山話してあげる」
――目覚めると、必ず傍には天満が居てくれる。
音も立てず静かに本に目を落としている横顔は透明でいてとても美しく、視線を感じたのかこちらを見てにこっと笑った。
「目が覚めた?またにこにこしてたよ」
「うん…楽しい夢を見てたから…」
「そっか、雛ちゃん少し散歩しに行こうか。とはいっても屋敷内だけど」
「うん。私、蔵がある奥の方に行ってみたいな」
「いいよ、探検しよう」
朔に断りを入れてふたりで手を繋いで広大な庭を探検した。
時折桜吹雪にまみれて互いの髪に桜の花びらがつき、それを互いに取ってやりながら、こんな穏やかな時間が自分に訪れるなんて夢ではないのかと頬をつねりたくなった。
ずっと続けばいいのに、と願った。
夢の中で会う度に我が子は少しずつ大きくなり、今では三つくらいの歳になっていて、膝に座るのが好きな子で飽きもせずずっと話しかけていた。
「女の子は父親似になるって言うから、あなたも年頃になったら天満さんに似てくるのかな?」
「あぅ」
本当は天満に話したいのだが、産まれてくるまでは黙っていようと決めていたため、夢の中でいつまでもふたりでごろごろするのが日課になっていた。
「少しずつそうやって大きくなって、産まれてくるまでの間に素敵な女の子の姿で会いに来てくれるんだよね?」
にこにこしているその顔が本当に可愛くて、むぎゅっと抱きしめると――目が覚める時の予兆なのか、我が子の身体がさらさらと金色の光に包まれていき、雛菊は名残惜しそうに膝の上の光を見つめた。
「また会いに来てね。あなたのお父様のこと、もっと沢山話してあげる」
――目覚めると、必ず傍には天満が居てくれる。
音も立てず静かに本に目を落としている横顔は透明でいてとても美しく、視線を感じたのかこちらを見てにこっと笑った。
「目が覚めた?またにこにこしてたよ」
「うん…楽しい夢を見てたから…」
「そっか、雛ちゃん少し散歩しに行こうか。とはいっても屋敷内だけど」
「うん。私、蔵がある奥の方に行ってみたいな」
「いいよ、探検しよう」
朔に断りを入れてふたりで手を繋いで広大な庭を探検した。
時折桜吹雪にまみれて互いの髪に桜の花びらがつき、それを互いに取ってやりながら、こんな穏やかな時間が自分に訪れるなんて夢ではないのかと頬をつねりたくなった。
ずっと続けばいいのに、と願った。