天満つる明けの明星を君に【完】
次から次へと湧いて出てくる妖を斬り結んでいった。

朔は普段落ち着いているように見えるが、百鬼夜行を行う時は先頭に立って誰よりも多くの敵を倒してゆく。

そんな朔を傷つけさせまいとまた百鬼たちも躍起になり、相乗効果で多くの結果をもたらしていた。

また天満は兄弟の中で誰よりも速く動けるし、二振りの刀は敵が必死に躱そうともその速さと斬撃に身体がついていかず、あっけなくその命を失っていった。


「大体は倒したな。結構な数だったが大丈夫か?」


「僕は大丈夫です。駿河の関係者は居ませんでしたね。でもしばらくはここは悪さをする者が減るだろうから一安心です」


「ついでに雛菊の宿屋に寄って休ませてもらおう。さすがに血の匂いがひどい」


鬼陸奥へ寄った天満たちは、相変わらず繁盛している店内に入って出迎えてくれた番頭を労った。


「僕と雛ちゃんが居なくて大変なのに頑張ってくれてありがとう」


「いえいえ、予約も数ヶ月先まで埋まっていて皆様にご好評を頂いております」


雛菊と話し合った結果、奮闘してくれている番頭にいずれ宿屋を譲ると決めていたのだがまだ本人には話さず、特別待遇用の最上階の部屋に通してもらって風呂に入り、束の間寛いだ。


「そういえばお祖父様が腹の子は順調だと喜んでいた。悪阻が治まったら腹がどんどん大きくなるぞ」


「雛ちゃんは大変だろうけど、僕は楽しみで仕方ないです。雛ちゃんがつらいことは僕が傍で全部やるつもりで…なににやにやしてるんですか」


「いや、お前の幸せそうな顔を見るとこうなってしまう。そろそろ母様の出産講義が始まるぞ」


「僕らが小さかった頃母様はいつもお腹が大きかったからですね、母様の講義なら安心です」


ふたりでひとつの大きな布団を被り、幸せを喜んでくれる朔にひっつきながら未来を語った。
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