天満つる明けの明星を君に【完】
それからというものの、天満の腕はさらに上がり、とうとう雪男は音を上げた。
「あのなあ、言っとくけど俺もう前線には随分出てねえの。ちっとは手を抜けよ」
「手なんか抜くか。僕と朔兄は小さい頃から打倒雪男が合言葉だったんだ。でもやったぞ!とうとう負かした!」
「負かしたんじゃねえ。飽きただけー」
呆れた雪男が背を向けた時――天満は左右の腰に差した刀をものすごい速さで抜いて振りかぶった。
それが本物の殺気を纏っていたため、思わず愛刀の雪月花を瞬時に顕現させた雪男は、その虹色にも光る白き刀で二本の刀を受け止めた。
「雪月花だ!すごい!」
「見世物じゃねえっつの!あっぶね…危うく死ぬとこだった…」
「ところで雪男。俺、来週当主になるんだ」
溶けるような儚さで雪月花を消した雪男は、真っ青な目を丸くして腕を組むと、にかっと笑った。
「そっか、良かったな、とうとうお許しが出たか」
「で、お前の処遇を考えた」
「処遇ってなんだよ。あー…そっか、俺、主さまの百鬼だから当主が代わると契約が解除されるのか。どうすっかな」
今度は朔が目を丸くして、縁側から腰を上げると雪男の胸元をぎゅっと握って唇が触れ合いそうな距離で真っ青な目を見据えた。
「お前は俺の百鬼になる。小さい頃からそう決まっている」
「ははっ、そうなのか?知らなかったんだけど。初耳なんですけど?」
「そういうわけだから、当主になった時は一番にお前と契約をする。覚悟しとけ」
雪男は三兄弟にとって師匠であり、兄であり、親のようなものでもある。
天満は小さく笑った雪男が否定しなかったことにほっとして、縁側にごろんと寝転んだ。
「来週は大忙しになりますね」
「お団子食べたい人は手を挙げてくださーい」
「俺食べます」
「俺も」
「僕も僕もー」
とうとう朔が当主に――
わくわくして、眠れなかった。
「あのなあ、言っとくけど俺もう前線には随分出てねえの。ちっとは手を抜けよ」
「手なんか抜くか。僕と朔兄は小さい頃から打倒雪男が合言葉だったんだ。でもやったぞ!とうとう負かした!」
「負かしたんじゃねえ。飽きただけー」
呆れた雪男が背を向けた時――天満は左右の腰に差した刀をものすごい速さで抜いて振りかぶった。
それが本物の殺気を纏っていたため、思わず愛刀の雪月花を瞬時に顕現させた雪男は、その虹色にも光る白き刀で二本の刀を受け止めた。
「雪月花だ!すごい!」
「見世物じゃねえっつの!あっぶね…危うく死ぬとこだった…」
「ところで雪男。俺、来週当主になるんだ」
溶けるような儚さで雪月花を消した雪男は、真っ青な目を丸くして腕を組むと、にかっと笑った。
「そっか、良かったな、とうとうお許しが出たか」
「で、お前の処遇を考えた」
「処遇ってなんだよ。あー…そっか、俺、主さまの百鬼だから当主が代わると契約が解除されるのか。どうすっかな」
今度は朔が目を丸くして、縁側から腰を上げると雪男の胸元をぎゅっと握って唇が触れ合いそうな距離で真っ青な目を見据えた。
「お前は俺の百鬼になる。小さい頃からそう決まっている」
「ははっ、そうなのか?知らなかったんだけど。初耳なんですけど?」
「そういうわけだから、当主になった時は一番にお前と契約をする。覚悟しとけ」
雪男は三兄弟にとって師匠であり、兄であり、親のようなものでもある。
天満は小さく笑った雪男が否定しなかったことにほっとして、縁側にごろんと寝転んだ。
「来週は大忙しになりますね」
「お団子食べたい人は手を挙げてくださーい」
「俺食べます」
「俺も」
「僕も僕もー」
とうとう朔が当主に――
わくわくして、眠れなかった。