天満つる明けの明星を君に【完】
鬼陸奥の秘密
元々備え付けの家具があったため物寂しい雰囲気ではなかったが、部屋数が多くて途中で探検をやめた。
天満と朔がまず目指したのはやはり風呂で、幽玄町の屋敷ほどではないがそこそこ大きな檜で作られた風呂を見たふたりは顔を見合わせてにたり。
「入るか」
「え、でも荷解きは」
「どうせ全部母様がやってくれる。嫌ならお前は入らなくていいぞ。俺だけで…」
言いかけたと同時に天満が素早く着物を脱ぎ始めたため、競争するようにふたりで脱ぎ散らかして浴槽にどぼんと浸かると、熱すぎず温すぎずちょうどいい適温で、同時に吐息が出た。
「はあ…気持ちいい…」
「水量がすごいな。うちの屋敷にも温泉が引けたらいいのに」
わいわい騒いでいると息吹が顔を出しに来て、湯をかけ合って童のように遊んでいるふたりを見て叱ってやろうと思っていた気持ちが萎えて笑った。
「もう、荷物が片付かないでしょ?後でちゃんと手伝ってね」
「後で母様も父様と入ったらどうですか?」
「えっ!?そ、それは…ちょっと……。私たちのことはいいから、早く早くっ」
顔を赤くして照れて走り去ってしまった可愛い母に頬を緩めたふたりは、風呂から出ると居間にあたる部屋へ行って部屋の隅に座った。
父の十六夜は片づけを手伝うでもなく庭で何やら知らない連中と話をしていて、天満は朔の腕を突いてそれを問うた。
「誰でしょう?」
「恐らく領主なんだろう。お前も後でちゃんと挨拶するんだぞ」
「はい、頑張ります」
苦手だけど、とぼそりと呟いて、朔から頭を小突かれた。
天満と朔がまず目指したのはやはり風呂で、幽玄町の屋敷ほどではないがそこそこ大きな檜で作られた風呂を見たふたりは顔を見合わせてにたり。
「入るか」
「え、でも荷解きは」
「どうせ全部母様がやってくれる。嫌ならお前は入らなくていいぞ。俺だけで…」
言いかけたと同時に天満が素早く着物を脱ぎ始めたため、競争するようにふたりで脱ぎ散らかして浴槽にどぼんと浸かると、熱すぎず温すぎずちょうどいい適温で、同時に吐息が出た。
「はあ…気持ちいい…」
「水量がすごいな。うちの屋敷にも温泉が引けたらいいのに」
わいわい騒いでいると息吹が顔を出しに来て、湯をかけ合って童のように遊んでいるふたりを見て叱ってやろうと思っていた気持ちが萎えて笑った。
「もう、荷物が片付かないでしょ?後でちゃんと手伝ってね」
「後で母様も父様と入ったらどうですか?」
「えっ!?そ、それは…ちょっと……。私たちのことはいいから、早く早くっ」
顔を赤くして照れて走り去ってしまった可愛い母に頬を緩めたふたりは、風呂から出ると居間にあたる部屋へ行って部屋の隅に座った。
父の十六夜は片づけを手伝うでもなく庭で何やら知らない連中と話をしていて、天満は朔の腕を突いてそれを問うた。
「誰でしょう?」
「恐らく領主なんだろう。お前も後でちゃんと挨拶するんだぞ」
「はい、頑張ります」
苦手だけど、とぼそりと呟いて、朔から頭を小突かれた。