天満つる明けの明星を君に【完】
どきどきした。
ただでさえ初恋の相手だったのに、戦っている姿を見てしまって、凛々しい姿に身体の奥底から湧き上がる――抱いてはいけない感情がむくむく膨らんだのを感じた。
「雛ちゃん終わったから目を開けていいよ」
…実は全て見ていたのだが、顔を覆っていた手を外して山猫の骸を見た雛菊は、老婆の背中を撫でてやりながら頭と胴体が切り離された山猫を見て怖じ気づいた。
「天満様、山猫はどうなるの…?」
「息を吹き返すことはないだろうけど、燃やすのが一番だと思う。お婆さん、申し訳ないけどここで燃やしてもいいかな」
天満に優しい声色と表情で話しかけられた老婆は、山猫の骸をちらりと見た後震えながら頷いた。
妖を見たことは以前にもあったけれど――こんなに美しい妖は見たことがなかった。
しかも助けてくれたとなると…
「もしや…あなた様は…百鬼夜行を行っていると言われる伝説の…?」
「あれ、知ってるんですか?」
「幼い頃から聞かされておりましたが…妖なのに人を助けて下さっているという一族が居ると聞いておりました。そうですか、あなた様が…」
「僕は三男坊なので百鬼夜行に帯同はしていませんが、兄が率いています。僕たちは皆さんの味方だけど油断しないで下さいね。妖は本来恐ろしい生き物だという認識は変えない方がいい」
天満は妙法と揚羽の二振りを軽く打ち合わせて炎を作ると、それを山猫の骸に擦りつけて荼毘に付した。
『我らの使用方法が違うようだが?』
「役に立ってるからいいじゃないか」
『雑すぎる!主よ、抗議するぞ!」
「うるさい。さあ雛ちゃん、用は済んだから戻ろうか」
天満が踵を返そうとすると、老婆は慌ててよろめきながら天満の前に飛び出して引き留めた。
「どうかお礼をさせて下さい!何もない所ですがせめて一泊していって下さいませ!」
天満は雛菊と顔を見合わせると、雪がちらほら降ってきた曇天を見上げて肩を竦めた。
「雛ちゃんはどう思う?」
「私、人の住んでる村に泊まるのははじめて」
宿泊、決定。
ただでさえ初恋の相手だったのに、戦っている姿を見てしまって、凛々しい姿に身体の奥底から湧き上がる――抱いてはいけない感情がむくむく膨らんだのを感じた。
「雛ちゃん終わったから目を開けていいよ」
…実は全て見ていたのだが、顔を覆っていた手を外して山猫の骸を見た雛菊は、老婆の背中を撫でてやりながら頭と胴体が切り離された山猫を見て怖じ気づいた。
「天満様、山猫はどうなるの…?」
「息を吹き返すことはないだろうけど、燃やすのが一番だと思う。お婆さん、申し訳ないけどここで燃やしてもいいかな」
天満に優しい声色と表情で話しかけられた老婆は、山猫の骸をちらりと見た後震えながら頷いた。
妖を見たことは以前にもあったけれど――こんなに美しい妖は見たことがなかった。
しかも助けてくれたとなると…
「もしや…あなた様は…百鬼夜行を行っていると言われる伝説の…?」
「あれ、知ってるんですか?」
「幼い頃から聞かされておりましたが…妖なのに人を助けて下さっているという一族が居ると聞いておりました。そうですか、あなた様が…」
「僕は三男坊なので百鬼夜行に帯同はしていませんが、兄が率いています。僕たちは皆さんの味方だけど油断しないで下さいね。妖は本来恐ろしい生き物だという認識は変えない方がいい」
天満は妙法と揚羽の二振りを軽く打ち合わせて炎を作ると、それを山猫の骸に擦りつけて荼毘に付した。
『我らの使用方法が違うようだが?』
「役に立ってるからいいじゃないか」
『雑すぎる!主よ、抗議するぞ!」
「うるさい。さあ雛ちゃん、用は済んだから戻ろうか」
天満が踵を返そうとすると、老婆は慌ててよろめきながら天満の前に飛び出して引き留めた。
「どうかお礼をさせて下さい!何もない所ですがせめて一泊していって下さいませ!」
天満は雛菊と顔を見合わせると、雪がちらほら降ってきた曇天を見上げて肩を竦めた。
「雛ちゃんはどう思う?」
「私、人の住んでる村に泊まるのははじめて」
宿泊、決定。