天満つる明けの明星を君に【完】

秘密の情事

雛菊が腕の中に飛び込んできたため、天満は知識を総動員させておずおずと雛菊の身体に腕を回して抱きしめた。

ぐにゃぐにゃ。

相変わらずこの感触に慣れずに固まっていると、雛菊がくんと鼻を鳴らして顔を上げた。


「天満様っていい匂いがするね。香をつけてるの?」


「いや、何も。雛ちゃんもいい匂いするよ。ふんわりする」


いくら女に慣れるためとはいえ雛菊の提案をすぐに受け入れることはできず、自分からどう接していいのか分からずにいた天満は、雛菊が背中に手を回してきてぎゅっと抱き着いてくると、がちがちに緊張した。


「ふふっ、天満様、身体の力抜いて」


「い、いや、その…すぐには無理だよね…。意識しちゃって何も考えられないんだけど」


天満は素直で本音をよく口にする。

だからこそ兄弟全員に可愛がられるのだが、それを聞いた雛菊もまたきゅんとして鍛え抜かれた胸に頬ずりをしてさらにがちがちにさせた。


「その…これって練習だよね?鍛錬だよね?いつまで続ければ慣れるのかな」


「鍛錬って!もうちょっと楽に構えた方がいいよ。いつ慣れるかは天満様次第だし、慣れるまで付き合うから」


「そ、そっか…うん、よろしくお願いします」


「眠たくなってきちゃった…。やっぱり一緒に寝るとあったかいね…」


うとうとしはじめた雛菊を緊張しつつも抱きしめると、また乱れた胸元がばっちり見えてしまって目が疼いた。


「雛ちゃんおやすみ」


「うん…おやすみなさい…」


すぐに寝入ってしまった雛菊の寝顔を見つつ、天満は必死に自身に言い聞かせていた。


「落ち着け僕。落ち着け、僕の身体…」


――結局一睡もできずに夜明けを迎えることになってしまった。
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