そばには、いつもキミがいた。
ゆりちゃんの態度から、そう感じた私は、その場を離れることにした。
「あ、翔。私……、教科書とか机の中にしまいたいから、先に席着いとくね」
「おぅ」
そう言い残して、その場を去ろうとしたとき、ゆりちゃんに袖口をそっと掴まれた。
「……彩夏ちゃん、あの、ごめんね……。それと、ありがとう」
眉を下げながら、ヒソヒソ声で話す彼女に、私は軽く微笑んで、ゆりちゃんの掴んでた手を優しく解放した。
自分の席についてからは、即行で机の中に教科書類を入れて、教室を飛びだした。
廊下、階段、運動場……。
ありとあらゆるところを走り回って、私は今、校舎裏へと来ていた。
芝生の上に体育座りをして、顔を埋める。
……何度あの光景をみても、心が押し潰されそうなくらいに苦しくなる。
そう……、あのふたりは最近付き合い始めたんだ。
ふたりが付き合いだしたのは、ちょうど一ヶ月前のこと。
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