イヤホン越しの恋人。
「ボウルなんて業務用買った」
と、困り顔で笑いながら、里香がキッチンを指さした。
「ん?」なんて、そちらに顔を向けるとカウンターの奥のレンジ台の上に大きなボウルが1つ………え、あれ大きすぎ


噛み切った残りの半分の照り焼きを、ぼんやりとしながら口へと運ぶ私に
「…そうなるわなっ!」
なんて、里香が笑った。

「た、大変やな」
頬を動かしてる私に
「いや、お兄ちゃん達は確かにしんどいって思う事もあるよ?あるけどさ、なおきとはるきの面倒もみてくれたりするし、外食とかしたらなおきもはるきもお兄ちゃん達の真似してちゃんと座ってるから、そういうのではすっごい助かる」

なるほど、と、納得してる私に、里香は「普段は話さないんだけど」なんて言いながら、前妻のことや義理姉への愚痴なんかを吐き出しはじめた。

ママ友付き合いや子供たちの習い事や、子供同士のトラブルの話しなんかも。


テレビの世界だと思ってる事を、次から次へと里香が話して、わたしは、ただただ頷くしかできなかった。

里香とは学生時代からの友人で、以前は私よりも全然頼りなかったのに、今じゃ本当に頭が下がりまくりだよ。



そんな話をしながらも、トモ君の相手もしたりなんかして、里香は本当に凄いな………



食欲がなかったなんて、まるで嘘みたいに食べれる状況に驚く事もせず、最後の一口を頬張って両手を合わせた。




「ねぇ、離婚とか考えたことないん?」
箸を弁当箱の上に置いて、麦茶の入ったグラスを持った。

「あるある!毎月!」
笑いながら里香も箸を弁当箱の上に置く。

……え?!毎月?


「そんなに?!」
「毎回愚痴ってるやん私!かなに聞いてもらってほんまスッキリやで」
…そうだっけ?

と、思い返すと、"そういえば“と、これまで何度か里香から聞いた愚痴を思い出した。


「里香ってほんますごいよな…私なら前の奥さんの子供は無理だ」
私自身、父に親権があったから、父が再婚し継母(ままはは)が出来た。
立場は違えど、言葉は汚いかもしれないけれど血の繋がりがない人を、こういう意味で受け入れるってのはなかなができないし

私が里香の立場なら、いくらお金があってもお断りだ。
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