イヤホン越しの恋人。
ダイニングチェアは6脚。
トモ君用の子供用椅子も加えられている。
私は窓を背に空いている席に腰を下ろし、カウンター越しに見える里香に
「なおくんとはるくんは?」と声をかけた。

里香はポットに水を注ぎながら
「なおきは学校。はるきは幼稚園やで」
と、眉を上げる。
…あぁそうか。今日は平日。
頬杖をつきながら、ふと壁に目をやった。

壁には旅行の時の家族写真や似顔絵などが飾られている。

離婚歴有りのご主人には、前妻との子供が2人いて定期的にやってくるそうだ。


家族写真に当たり前に映り込んでいる思春期の男の子2人と、里香の子供が3人。
まるで大家族だ。

アラサーだけどまだまだ若く見える里香からしたら、こんな大きな子供がいる母親にはとても見えないけど、、、でも、傍から見たらもう“オバサン"な私達なんだよな。。


ここからはトモくんの姿は見えないけど、何を言ってるかなんとなく聞き取れる言葉が部屋に響き渡る。


「はいはい、お昼ご飯にしよーね!」
里香がポットをセットし、トモくんを抱っこしてこちらへとやって来た。


カウンターから出前メニュー表を何枚か手にし、私に差し出した。
「出前でごめんね」
里香が腰を下ろし、膝の上にトモくんを座らせる。
「ううん。私も助かる」

ファミリーレストラン、寿司、ピザ、弁当など様々な出前表をテーブルの真ん中に広げていく。

トモくんは、卓上で手をバンバンと叩きつけたかと思うと、グネグネと体を捩(よじ)らせながら滑り落ちた。

「デーブ!見る!!!デーブ!!!」
そう言いながら、テレビの前へと移動するとリモコンを掴んで、里香の前へと駆け寄って差し出した。

「はいはい。dvdね!」
里香は、やれやれとテレビを点けると、またトモくんはテレビの前へと駆けて行ってしまった。


セットされたディスクをリモコンで作動させる。

トモくんの言葉を里香は解読し声に出す。
私からしたらまるで外国語だけど、さすがは母親だ。と、感心していると

「私とトモキはなんでもいいよ」と、視線をメニュー表へと向けた里香が口角を上げた。



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