人形の君に心をあげる。



...じゃあ、この女は?



再び女に視線を戻す。



女は俺と目が合うとにっこりと笑ってみせる。



「驚かせてしまってごめんなさい。」


そして、その後、続けて深々と頭を下げる。




「...あ、ああ」



驚く出会い方をした割には、その話し方や振る舞いには落ち着きがあって、少し拍子抜けする。




勝手に部屋に入る割には...案外、ふつうというか




「新しいバトラーさんが来たって言うから、見に来ちゃいました。」


そう言って、申し訳なさそうに、だけど楽しさも含んだ笑いを浮かべる。



「...」



なんで見に来るんだよ


そうは思っても、まさか初対面でそこまで冷たくあしらえない。



見に来たって...


どこからだよ...



余計なことは言わず、カーテンの開かれた側の窓から外を確認する。


窓から見える景色は、昨日見たままの風景で、森が広がっているだけだった。



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