人形の君に心をあげる。



「...私、以前からよくここに遊びに来ていたんです。」



そう話す女の口調は静かで、落ち着いていた。




「...」



何も言わずに、ただ耳を傾けていた。






「新人さんが来るって聞いて、会いに来たのはよかったんですけど...部屋も何も知らなくて......。



仕方ないから、起きてきたら挨拶しようと思って...それで...


今まで遊んでいたこの部屋で時間を潰そうと思ったんです。



そしたら...」





そこまで言って女の言葉が途切れる。





「...」




なんとなく言いたいことは分かった。



下ばかり向いていた視線を女に移す。






「...わざとじゃなかったんです。」




俺と目が合うと、再び言葉を探しながら、申し訳なさそうにそう言う。






< 110 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop