人形の君に心をあげる。
「...最初は気づかなかったんです。真っ暗だったので...。
以前のように空き部屋だと思っていたんです。
そしたら、しばらくして...あなたがいることに気が付いて...」
話しながら女の顔色が蒼くなっていく。
「早く、出ていかなくちゃって思ったんですけど...
その時にはもう遅くて...」
気まずさを紛らわそうとしてなのか、女は最初に俺に話しかけてきた時のように笑ってみせる。
あの時は、その笑顔はいたずらっぽくふざけているように見えた。
しかし、いま改めて見ると、照れ笑いとかの類の何かをごまかす時の笑いにそっくりだと思った。
...きっと、どんな時でも、笑って感情をごまかすタイプの人間なんだろう。
「すみませんでした...」
そう謝りながら、深々と頭を下げている。