人形の君に心をあげる。



「そうでしたか...」


話を聞き終わると庭師は静かにそう言った。


そして、黙って、花の手入れを続ける。


その顔は、さっきまでの朗らかなものとは異なって、何かに考えを巡らせているように見える。




たぶん、俺の話を理解しようと、頭の中で整理しているんだろう。




無理もない。


俺自身、話していて、にわかには信じがたい作り話のようだと思ったんだから。


このじいさんだってそう思ったに違いない。




...しかし、なんだってあの男は俺をここに連れてきたんだろう




俺がぼろぼろで倒れていたから、かわいそうにとでも思ったのか


それとも、良心から、けが人の手当てをしなくてはと思って連れ帰ってきたのか



考えてみたけど、どちらも違う気がする。



だって、もしそのどちらかが理由なら、あんな状況で


『うちで働かないかい』

なんて、言うか?



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