人形の君に心をあげる。
いいや、俺だったらそんなことは言わない。
だってそうだろ?
もし本当に俺を助けようとそんな提案をしたのならば、順序がおかしすぎる。
まずは、けがの手当てを優先するはずだ。
そんな話をするのは、俺が回復するのを待ってからでいいだろう。
そして、そのうえでどうしてあんな状況に陥ったのか聞いて...
...聞いて......
俺の中にあるかすかな違和感が刺激される。
それから、俺の状況...俺が家や仕事がないことを知って、不憫に思った男は俺に、『うちで働かないか』と声をかける......?
って......
あれ...?
なんかこれ、おかしくないか?
俺はあの時、男に自分の境遇なんて話してない。
話をする余裕なんてなかった。
目が覚めてからもそうだ。
俺は誰にも自分のことなんて話してない。
あの、辻堂とかいう男にだって聞かれもしなかったんだ。
当然話してなんかない。
...じゃあどうして、あの時、あの男は俺にあんなことを言ったんだ?