人形の君に心をあげる。
君の知らない話をしよう∼1∼
彼、由比愛也くんが屋敷の中に入っていくのと入れ違いに、その男は木の陰からひょっこりと姿を現した。
「...立ち聞きはよくありませんね」
男を横目に見ながら、元の作業に戻る。
男はそう言う私に、申し訳ないとでもいうかのように軽く頭を下げる。
その行動は、職業柄に加えて、以前の私たちの関係性を考えてのものなのだろう。
「ですが...今のは、少し...」
言葉を選びながら話しているのがよく伝わってくる。
...それでも、以前は私に意見など、しようともしなかったのにね
「これでいいんだ、辻堂くん」
「っ...ですが...」
私の言葉に彼が再び口を開く。
「...」
しかし、私と視線が重なると、すぐに目を伏せ、ぐっと言葉を飲み込んだ。
昔の癖が今もなお、抜けないんだろう。
私はもう...一介の庭師だというのに。