人形の君に心をあげる。





が、またしても口を開く。



どうやら今回の件に関しては、あくまで引くつもりはないらしい。




「いいえ、関係あります。私はあの子の教育係です。自分の担当する子がどのような状況にあるのか把握する権利があると思います。」





それまでとは違ったはっきりとした物言い。



ここに来てやっと、自分の中で迷う気持ちがなくなったのだろう。




...本当に、つくづく想定外だ。






「...」


小さくため息が漏れる。





君が他人の痛みを分かる心優しい人間だとは、以前から知ってはいたが...



誰よりも物分かりの良い君が、ここまで彼に感情移入するとはな。





もう私がバトラーでなくなったように、



君も、昔の君ではないということかな...





それとも、昔の君があるからこそ、今回は”前の時”のような繰り返しをしたくはないということなのか...





どんな心境の変化があったのか、私には分からないが、


飼い犬に手をかまれたような気分とは、まさにこういう時に使う言葉なんだろうな。






どうしたものか...



頭の中で考えながら、彼に背をむけ、花の作業を続ける。





その背中越しに、彼の答えるまで動かないという強い意思が伝わってくる。





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