人形の君に心をあげる。
「あの子を連れてきたのは、あなたです。それならば、あの子がどんな事情を抱えていたのかも当然知っていたはずです。
それなのにどうしてあんな言い方をするんですか。」
その言い方からは怒りにも似た感情が読み取れる。
「...どうして、私があの子に言ったことで、君が怒るんだい?」
彼に視線を移すことなく問う。
”怒っている”そう私に指摘されたことで、彼は自分の話し方にはっとしたらしい。
感情を押し殺すように、ひと呼吸間を開ける。
「...怒ってなどいません。私はただ、”家”のことや”家族”のことは言わなくてもよかったと言っているんです。」
「...なぜ?」
「そ、それは...」
その質問に、言葉を詰まらせる。
「...”かわいそう”だからかい?」
あえて、彼の言葉を先に言う。
その言葉に完全に言葉を詰まらせる。
...図星か
「...同情などいらないのです。
君だって見たでしょう、あの子の態度を。
あの子は同情されることを嫌い、かわいそうだと思われることにとても敏感でした。
”同情”する方が、あの子にとって”かわいそう”なことだとは思いませんか?」