人形の君に心をあげる。
そう言いながら振り返り、にっこりと微笑んで見せる。
そんな私とは裏腹に彼の表情はどんどん険しくなっていく。
「何のためにです?」
さすがは現・執事長だけのことはある。
器量や優しさだけじゃない...雰囲気もなかなかのもの......
しかし、私はそれくらいではひるみませんけどね。
「人間も花と同じなんです。」
さっき見ていた白い花に手を伸ばしながら、そう言う。
「花は買われた後、各家に持ち帰られ、その家の花壇に植え替えられるでしょう?
その土は、今まで入れられていた土と違うかもしれない。
まわりの温度だって、同じなんてことはない。
手入れが悪ければ、虫にだって襲われるかもしれない。
でもね、花は環境を選べないんです。」