人形の君に心をあげる。



右手につかんだ、根がむき出しの花を彼に向かって差し出す。




「...」


冷たい彼の視線が私を見据えている。




”怒り”を隠そうともしないその態度。



...だから君はバトラーには向かないんだ




バトラーは常に冷静沈着でなければならない。


なのに、君ときたら、すぐに情に流される...





「幸い、彼には頼る人も、帰る場所もない。

彼がここから出ていくことは決してない。」





「...ふざけないでいただきたい。


あなたは、花の観察に飽きたから...今度は人間にすると、そうおっしゃっているんですか?」




何とかバトラーとしての自分を保とうとしてはいるが、その声は怒りに震えている。



感情が殺し切れていない。




「いかにも」



そんな彼を眺めながら、平然と答える。





< 88 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop