人形の君に心をあげる。
彼はそれを聞き、私から目をそらす。
その表情はバトラーのそれではなかった。
そして、
「...あなたのやっていることはあまりにも非道すぎる。」
そう言って、私の隣、数メートル先に置かれたあの子のジャケットを拾い上げる。
「...あの子におかしな真似をしたら、いくらあなたでも、この私が許しません。」
静かに、だけど、冷酷にそう言い捨てて屋敷に向かって歩いていく。
その背中を見送りながら、やっぱり笑いがこみ上げてくる。
「...君も、言うようになったなあ」
聞こえないように小さくつぶやく。
辻堂くんがこれほどまでにあの子に肩入れするとはね...
少し予定が崩れそうだな。
まあ...それはそれで面白そうだけどね
「彼には少し注意を払わないといけないね...」
西日で照らされるその屋敷は、まるで活気のあった昔のように輝いて見える。
そう思ったその瞬間、あのにぎやかな笑い声が一瞬だけ聞こえたような気がした。
「気のせいか...」
とは言え...
君のおかげで楽しくなるかもしれないね、由比愛也くん。
君には、期待しているよ...