人形の君に心をあげる。
さっきまでにぎわっていたその空間は嘘のように静まり返る。
みんな、誰かが動き出すのを伺うみたいな妙な時間が流れる。
...なんだこれ
さっきまで俺を見ていた子たちは、俺と目が合うと、俺の視線から逃れるように目をそらす。
...どうしてみんな俺から目をそらすんだ?
それまで感じていた圧力みたいなものからは解放された。
だけど、今度は俺を突き放すみたいな空気に包まれる。
...ね、ねえ...やめてよ、この空気
そんな時間を止めたのは、輪の外から聞こえてきた新しい声だった。
『お前、お父さんとお母さんいないの?』
そう言いながら一人の男の子が近寄ってくる。
『...』
俺はその子を見つめたまま、何も答えなかった。
その子の表情からは何の感情も読み取ることが出来ない。
みんなのように目をそらすわけでもない。
笑うでもない。
さげすむでもない。
なんの感情も含まない表情。
...何を考えてる?
だけど、すぐに気づいた。
”確認”
この子はただ確認したいんだ。
どこから聞いたのかは知らないけど、その情報が正しいのかどうかを。