人形の君に心をあげる。
『...』
俺はそれが分かっても、答えなかった。
答えられなかったんじゃない。
意図的に答えなかったんだ。
...答えたらきっと、今のこの空気がもっと俺を苦しめる方に変わってしまう
そんな予感がしたんだ。
答えない俺の代わりに口を開いたのは、またあの子だった。
『やめなよ、そういうこと言うの』
その声は男の子を叱るような、鋭い声だった。
『え...』
俺は困惑した。
俺にはなぜその女の子が俺をかばうのか分からなかった。
だって...俺が施設の子だってばらしたのはお前だろ
お前が言わなければ、こんなことにはならなかったかもしれないのに...
男の子はそんな声を気にすることなく続ける。
『お母さん同士が話してるの聞いたんだ。やっぱり、本当だったのか』
その男の子は笑いながらそう言う。
女の子が止めに入ったことと、俺が黙ったままだったのが、男の子を確信させたんだ。
『...』
俺はその子が嬉しそうに、楽しそうに笑う姿を口を固く結んでただ眺めることしかできなかった。