人形の君に心をあげる。
『やめなよ』
まわりに居た女の子たちが何度もそう言って、その男の子を遠ざけようとする。
でも、その男の子は
『なんでだよ、本当のことを言ってるだけじゃん』
女の子に注意されたことで今度は不機嫌になり、そう反論する。
『...でも、言っていいことと悪いことがあるよ』
さっきまで俺を取り囲んでいた別の女の子の一人が言う。
それが始まりのホイッスルみたいなものだったんだ。
次第に不穏な空気が伝染し広がっていく。
それぞれに味方らしき新しいメンバーが増えていき、どんどん大事になっていく。
それはとても不思議な空間だった。
自分の話が自分以外でされている。
当事者なのに蚊帳の外にいる。
どうすればいいかなんて、やっぱり分からなくて、俺はただそこにいるだけだった。