略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
*


「おいしいですね。和菓子なのにコーヒーに凄く合う」


 柔らかな陽が射すリビングのソファで並び、ふたりで美郷が買ってきた和菓子を食べる。

 小豆の練り込まれたふわふわの生地をバームクーヘンの層のような生地で挟み、綺麗な長方形に切られたお菓子。

 一切れずつ包装してあり、それぞれの皿に二個ずつ並べた。

 甘さ控えめの上品なもので、匠海が淹れてくれたコーヒーとの相性は抜群だった。


「和菓子っぽいけどこれ、チョコレート菓子って書いてある」

「え、そうなんですか?」

「ほら」

「チョコレート挟んであるんですかね」


 個別包装の裏面には、確かにチョコレート菓子と書いてある。

 匠海の手元を覗き込む美郷は、思いがけず近づいた距離にどきりと胸を鳴らした。

 さっと避けてしまっては匠海を傷つけかねないので、じわりと身を引こうとすると、それに気づいたらしい長い指が美郷の顎を掬い取った。


「逃げることないだろ」

「……っ」


 近距離からのキスは容易いことで、匠海はあっさりと美郷の口唇を奪った。
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