略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
ガンッ、という重い音が応接室に舞ったあと、室内の静寂に飲まれて消えた。
美郷はそれをどこか遠くで、何かの映画のワンシーンでもぼんやり見ているかのような気持ちで見つめた。
「っ……にすんだよ、あっぶねーな」
顔の横に振り下ろされた拳を目で辿り、陽翔は匠海を睨み上げた。
「美郷は俺がもらう」
陽翔を真っ直ぐに見下ろす匠海は、はっきりと告げた。
匠海が美郷の婚約者を前に、堂々と言ってくれたことが、美郷の胸を熱くする。
「お前とは絶対に結婚させないし、美郷を幸せにするのは俺だ。
お前がグループの権力を欲してるなら好きなだけもらえばいい。俺は家督に興味ないからな。
お前は結局、じいさんたちの言いなりになってるだけだって、いい加減気づけよ」
呆れたように吐き捨てる匠海は、陽翔から離れて背を向ける。
行こう、と美郷の手を取り部屋を出ようとするが、美郷はその場に留まりテーブルから起き上がる陽翔をじっと見据えた。