略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
「私、陽翔さんとは結婚しません」
美郷は、これまで頑なに守ってきたことを覆す言葉を静かに伝えた。
「今さら誰が認めるんだ、そんなこと」
陽翔は身を起こし、服の乱れを整えながらあしらうように笑った。
「私は幸せな家庭を作りたいんです。運命の人と寄り添いあって、笑い合える人生を送りたいと思ってきました。
でも、その相手はあなたじゃないんだと、今ようやく気づきました」
今まで一度も会ったことのない人を信じていた自分が馬鹿だったのだ。
両親がそうだったからといって、自分にも当てはまるわけではなかった。
自分の人生は、自分で見極めなければいけない。
自分で決めた道を生きて行くのが、何よりも自分の理想とする幸せに繋がっている気がする。
美郷の手を今しっかりと握ってくれているあたたかさがあれば、それは叶うと思う。
ぎゅっと手を握ってくれる匠海を振り向くと、琥珀の瞳が柔らかく美郷を見つめてくれていた。
美郷は一緒に人生を歩いていくのは、この人しかいないと直感的に思った。